普通の病棟ナースとは違う、自分で場所を選んで職場を転々と移動しながら働く「トラベルナース」という働き方があります。
テレビ朝日系列のドラマ「ザ・トラベルナース」で題材として取り扱われていて、気になっている人もいるのではないでしょうか。
本記事ではトラベルナースについてメリットやデメリットを解説し、実際にトラベルナースに転職する方法も紹介します。
トラベルナースとは
トラベルナースとは、1980年頃にアメリカのニューオリンズで広まった、人手不足の病院やクリニックで一定の期間働くという看護師の働き方です。
約4~13週間の任期を終えると次の勤務先で働くというスタイルで、基本的には自分の希望に合わせて働きかたを自由に選べます。
アメリカの場合、NLCという看護師免許の制度があり、NFCに加盟している州であれば移動しても新たに資格を取得する必要はありません。
報酬は専門分野によって異なりますが、平均時給は30~50ドルと高く、カルフォルニアやフロリダなどの温暖な地域を選んで旅行感覚で働きに行けるため魅力的でしょう。
日本では、「応援ナース」とも呼ばれていますが、派遣ナースとは雇用先が異なります。
派遣ナースは派遣会社に雇用されて、各医療機関に行き勤務しますが、トラベルナースの場合は病院などの医療機関が直接雇用して働くことができます。
トラベルナースの契約期間は約半年が一般的で、場合によっては延長できることもあります。
契約を満了した後は、旅行に行くなどまとまった長期休みを過ごして、その後に他の地域でトラベルナースとしてがっつり働くというライフスタイルも可能です。
トラベルナースのメリット
北海道から沖縄まで自由に勤務地を選べるトラベルナースという働き方。
ここではトラベルナースとして働くメリットを紹介します。
給料が高い
トラベルナースは、パート看護師の時給と比較すると高く設定されていることが多いです。
病棟勤務の募集では時給2,500円以上の求人もあり、フルタイムで勤務すると月収37万円も望めますよ。
臨床経験が長いナースの場合は、夜勤ありで月50万以上稼ぐことも珍しくありません。
給与が高い理由としては、看護師の一時的な人員不足により期間限定で募集していることが挙げられます。
そのほかトラベルナース手当が別途支給される医療機関もあるので、転職する際に確認することをおすすめします。
人間関係で悩まない
トラベルナースは、職場の面倒な人間関係で悩む必要がないのも良い点です。
正社員やパートで同じ職場に勤務していると、気の合わない同僚や意地悪な先輩看護師と毎日顔を合わせるのが憂鬱になることもありますよね。
仕事自体は好きでも、一緒に働く看護師の人間関係が原因で退職を考える人も少なくありません。
トラベルナースという働き方であれば期間限定の職場と割り切って仕事ができるので、人付き合いのストレスからは解放されます。
基本的なコミュニケーションがとれれば業務に支障は出ないので、無理に付き合う必要がなく穏やかに過ごせるでしょう。
住宅環境が整っている
トラベルナースは福利厚生が充実しており、引越し先の住居や家具・家電などの生活必需品が用意されていることが多いです。
赴任する際の交通費や引越し費用も病院が一部負担してくれるので、資金を準備する必要もありません。
病院の借り上げ寮やマンションは、賃貸で借りると高くて生活費がかさんでしまいます。
地方に住んでいて都内でトラベルナースとして働きたいと考えている場合は、とくに家賃などの生活費がネックになるでしょう。
トラベルナースで住居の用意があると、自分の負担が月2,3万円程度で済むので非常にお得ですよ。
スキルアップできる
トラベルナースとして各地で働くと、さまざまな事例を学べるのでスキルアップできます。
勤務地によっては仕事内容も選べるので、最新の治療や緩和ケアなど専門性を高めることも可能です。
地域に根差した医療介護、都会での先端医療、そのほかにも救急医療・精神看護・感染症対策など、学びたい分野に特化した職場を選ぶこともできますよ。
また、医療機関によっては研修を受けられる場合もあるので、希望する場合は研修が設けられているか調べてみましょう。
係・委員会業務がない
トラベルナースとして病院で働くと、係や委員会業務を割り当てられることがありません。
大変な看護業務をこなしながら、休憩時間や休日などを費やして委員会の仕事をすることがストレスになっている看護師は多いですよね。
係や病棟カンファレンスなどで週の大半が残業ということもあるでしょう。
トラベルナースは期間限定の契約なので、雑務に追われることがなく、配属部署の看護業務に集中できます。
残業があったとしても時間外手当がきちんと支給されるので安心ですね。
ライフワークバランスを重視できる
トラベルナースは、ライフワークバランスを重視したい人にぴったりの働き方です。
フルタイム正社員の看護師は、夜勤や残業が多く、プライベートの時間を十分に確保できないこともありますよね。
しかし、常に緊張感のあるミスの許されない仕事だからこそ、息抜きすることが大切です。
トラベルナースなら半年の期間はがっつり働き、その後はゆっくり休むという働き方もできるので、趣味や旅行に打ち込みやすいでしょう。
もし職場が気に入れば契約延長も可能なので、その時の気分によって仕事とプライベートを両立することができます。
トラベルナースのデメリット
手厚い福利厚生や高給与などの条件で、自分の希望する場所を選んで働けるトラベルナース。
ここでは、トラベルナースとして働く際のデメリット・注意点を紹介します。
キャリア形成が難しい
さまざまな地域の医療現場で看護師の経験を積めるトラベルナースですが、将来的なキャリア形成が難しい場合もあります。
非正規雇用のため、履歴書上では仕事を転々としているイメージを持つ人も少なくありません。
そのため、将来は正社員として働き、主任や看護師長などの管理職を目指したいと考えている人には向いていない場合があります。
しかし、これまでの臨床経験を活かしてトラベルナースとして経験を積むことで、他の看護師よりも優れたアセスメント能力と看護技術が習得できるはずです。
トラベルナースとして働く期間と目的を最初に決めて働けば、メリットの方が大きいでしょう。
ボーナス・退職金がない
トラベルナースは、正社員ではないのでボーナスや退職金がもらえません。
働く期間が長くても半年と決まっているため、ボーナスや退職金の支給条件には当てはまらないです。
しかし時給が高いことや「トラベルナース手当」がつくこともあるので、金銭的な不満は感じにくいかもしれません。
もし雇用期間を延長して働きたい場合は、トラベルナースから正社員として勤務することもできます。
半年間で職場の人間関係や仕事内容も十分に把握した上で判断できるので、失敗することも少ないでしょう。
休みを取りにくい
トラベルナースは半年以内の契約で働くため、有給がつきません。
そのため、体調不良や私用で急なお休みは取得しにくいことがあります。
もし休みを取得したい場合は、事前申請で了承を得る必要があり、休んだ分は欠勤扱いとなりお給料が減ってしまいます。
精神的・体力的な負担の多い看護業務を続けるためには日々の体調管理がますます重要となるでしょう。
休みは欠勤扱いとなるトラベルナースですが、医療機関と相談して契約を延長することも可能です。
その場合は就労が6か月以上になるので、有給が付与されますよ。
トラベルナースに転職する方法
全国各地の医療機関で働けるトラベルナースは、魅力が多く興味を持つ人も多いです。
「私でも転職できる?」「どんな資格があれば有利?」などトラベルナースに関心がある人に向けて、転職する方法を紹介します。
着実な手順を踏んで、転職を成功させましょう。
臨床経験を積む
トラベルナースは人手不足の病院で即戦力となって働くことが条件のため、新人看護師のうちから転職することは難しいです。
募集している医療機関の募集要項にもよりますが、少なくとも臨床経験が1年以上であることが必須でしょう。
採血や点滴などの看護技術や、緊急時の挿管介助・動脈圧ライン確保の介助など、働きたい分野に合わせた経験が必要です。
また、さまざまな患者さんを受け持つことになるので、観察力やコミュニケーション能力がある人は向いているでしょう。
専門スキル・知識を磨く
トラベルナースに転職するためには資格取得などの条件はありませんが、自分のスキルや知識を深めるためにも以下のような資格を持っていると有利です。
- 認定看護師
- 呼吸療法認定士
- ACLSプロバイダー
認定看護師は、がん薬物療法看護や、皮膚・排泄ケア、救急看護など特定の分野のスペシャリストとして、キャリアアップするためには有利な資格です。
決められた時間のプログラムを受講して研修や実習を経たあとに試験に合格することで資格取得できます。
呼吸療法認定士は、呼吸器疾患の知識を深めることができ、呼吸器ケアの技術向上や人工呼吸器の管理をする上で役立つ資格です。
理学療法士や臨床工学士も取得できるため、チーム医療を行う上で重宝されるでしょう。
ACLSプロバイダーは、二次心肺蘇生法を指しており、気道確保や薬物投与の知識や急性不整脈や脳卒中などの特徴とケアについて習得できます。
救急外来やICU、外科病棟でトラベルナースとして働きたい場合に役立つでしょう。
2日間の受講と実技試験・筆記試験を通過することによって資格が取得できますよ。
転職サイトに登録する
トラベルナースになるには転職サイトに登録し、希望に合った求人を紹介してもらうことが一番スムーズな方法です。
専門分野の資格は、継続して勉強することで習得できるため時間がかかります。
また臨床経験はある程度必要ですが、柔軟性も重要なので新しい職場のやり方を取り入れようとする気持ちも忘れてはなりません。
新しいことが好きで積極的に学ぼうとする意欲のある方なら、トラベルナースという働き方は向いているでしょう。
今のスキル・経験でできる仕事があるのか不安な場合は、転職サイトの担当コンサルタントに相談してみましょう。
\トラベルナースの転職先を /

まとめ
トラベルナースは自然豊かな田舎や離島など好きな場所で生活しながら、その土地ならではの看護経験を積んでスキルアップできる魅力ある制度です。
まずは転職サイトでどんな求人があるのか確認して、その土地で働く自分をイメージしてみるのも良いでしょう。
看護師として短期間で大きく成長でき、たくさんお金を稼げるので、興味がある方はトラベルナースにチャレンジしてみてくださいね。
