病棟での多忙な業務に疲弊してしまうと「もう少し落ち着いた環境に転職したい」と、つい考えてしまいますよね。
クリニックは病棟と比べて穏やかに働けるイメージがあり、看護師が選ぶ人気の転職先の一つです。
この記事では、新人看護師がクリニックに転職する際に知っておきたい基礎知識やメリット、デメリットについて詳しく解説します。
転職を検討している方はぜひ参考にしてください。
クリニック看護師の基礎知識
クリニックで働く看護師は、どのような業務をしているのでしょうか。
病棟とは異なる業務も多く、実際働いてみると向き不向きも大きく分かれます。
それでは、詳しく見ていきましょう。
クリニック看護師の主な仕事内容
クリニックで働く看護師の業務は、医師の診療上の補助がメインとなります。
具体的には以下の通りです。
- 問診
- 検査の準備、説明
- 採血・点滴・心電図など
- 外来手術の介助
- 薬剤や使い捨て診療材料の補充
- 器械の洗浄・滅菌
病院とは違い、薬剤部や中央材料室がないので看護師がすべての物品の準備と管理を行わなければなりません。
また、勤務するクリニックで行うすべての検査や診察の介助などを、1人でできるようになる必要があります。
病棟看護師とクリニック看護師のちがい
病棟看護師と大きく異なる点は、入院患者がいないので療養上の世話を行わないことです。
具体的には、入浴介助や清拭、洗髪、トイレ介助・体位交換などがありません。
また、クリニックは休診日が決まっているのでシフトも固定されやすいです。
有床クリニックでない限りは夜勤もありません。
基本的に病状が落ち着いた患者さんが多いので、緊急対応は少ないです。
しかしスタッフの人数が少ない分、一連の業務を全て覚える必要があります。
クリニック看護師の一日のスケジュール
クリニックの看護師業務は、基本的にはルーティン化されています。
| 8:30 | 診療開始前 | クリニック内の換気・清掃 検査や書類の準備 |
| 9:00 | 午前診療開始 | 医師の診療介助 患者の検査や採血・点滴 問診や検査の説明、電話対応 |
| 12:30 | 午前診療終了 | 昼休み 午後診療の準備 |
| 14:00 | 午後診療開始 | 医師の診療介助 患者の検査や採血・点滴 問診や検査の説明、電話対応 |
| 18:00 | 午後診療終了 | 物品・書類の整理・片付け 翌日の準備 |
クリニック看護師のやりがい
地域に根ざしたクリニックでは、患者さんに名前を覚えてもらいやすく、長期間かかわることも多いです。
中には、親しみを込めて担当を指名されることもあり、その人にあわせた自分らしい看護を提供できる喜びを感じることができるでしょう。
また、医師やスタッフと毎日かかわるので、お互いを尊重して息のあった業務ができることも魅力です。
クリニック看護師の平均年収
クリニック看護師の平均年収は病院(病棟)に勤務する看護師に比べ、100万円以上の差があります。
| 施設形態 | 平均年収 |
|---|---|
| クリニック | 382万円 |
| 病院(病棟) | 507万円 |
クリニック看護師の平均年収が少ない一番の理由は、夜勤がないからです。
まな施設形態に関係なく、地域によっても年収に差が開くことがあるので注意してください。
しかし診療科によっては、病棟勤務よりも高収入になるクリニックもあるでしょう。
とくに美容クリニックは自由診療のため給与水準が高い傾向にあります。
透析クリニックについても、専門性の高さと技術・知識を求められるので、高給与の求人が多いですよ。
新人看護師がクリニックに転職するメリット
新人看護師がクリニックに転職するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
具体的には以下の5点が挙げられます。
精神的な負担が少ない
クリニックは、重症患者の対応が少ないため精神的な負担を感じにくいです。
とくに、外科系の病棟や集中治療室でプレッシャーが強くて転職を検討している新人看護師にとっては、大きいメリットといえます。
また、研修や勉強会が病棟と比較して少ないので、余裕が生まれます。
夜勤がなく体調が整いやすい
クリニックは日勤帯で勤務が終了することが多いので、不規則なシフトだった病棟よりも体調面が安定します。
夜勤がどうしても体に合わなかった人や、日勤と夜勤を繰り返して不眠などの症状に悩んで転職を考えている場合は、健康的に働けるので嬉しいですね。
患者とのかかわりが深くない
1日当たりの外来患者が多いほど、1人の患者と関わる時間は短いです。
病棟では、長期入院している患者さんとの長い付き合いに精神的に疲れてしまう看護師も少なくありません。
クリニックなら広く浅く患者さんと付き合うことができます。
病棟勤務と比較して休みが取りやすい
365日24時間業務がある病棟勤務では、毎月のシフトが決定するまで休みがわからないことも多いですよね。
とくに新人看護師の場合は希望休みを取りにくい雰囲気があるのではないでしょうか。
クリニックは休診日に必ず休めることや、他のスタッフとの相談で希望休みがとりやすいです。
さらに午前と午後の間に2時間ほど休憩時間を設けている場合も多いので、ゆっくりと働けますよ。
今までの自分の技術・経験を活かせる
病棟で働いていた経験があれば、採血や点滴などの看護技術を活かせます。
また、さまざまな患者さんとのコミュニケーションも経験しているため、クリニックにおいてもスムーズに問診や声かけができるでしょう。
新人看護師がクリニックに転職するデメリット
一方、新人看護師がクリニックに転職するデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは5つに分けてご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
教育体制が充実していない
クリニックは病院よりも教育体制が整っていない場合が多いです。
そのため実務経験が少ないと苦労する場合もあります。
スタッフから業務をその都度教えてもらう事はできても、基本的な疾患の知識や根拠については自己学習しなければなりません。
経営者(院長)の意向が看護師の働きやすさに影響する
クリニックでは、個人経営が多いので院長や経営者の独自のルールに従う必要があります。
とくに、クリニックの掃除などの雑務を外注していない場合は、勤務時間外でもスタッフでやらなければなりません。
また人間関係にも注意が必要です。人数が少ない中でも周囲に協力的でない看護師がいても、院長の意向で適切な対応がとられないケースもあります。
急な休みが取りづらい
クリニックは全スタッフの人数が少ないので、一人当たりの業務負担が大きいです。
病院と違って余裕のある人員配置をしていないので、1日に勤務する人数がギリギリのことも少なくありません。
そのため体調不良や子供の熱などで当日休みをもらうことが難しい場合があります。
平均年収が全体の病棟看護師より低い
病棟看護師と年収を比較すると、夜勤手当がない分、平均して30万ほど低くなります。
病院は福利厚生が整っていることが多いですが、クリニックは規模によって差が激しいです。
そのため、単なる年収だけでなく、有給日数や取得率、退職金の有無、産前産後休暇の取得の可否など総合的に判断する必要があるでしょう。
診療終了時間や残業状況で帰宅時間が遅くなることも
クリニックでは、受付時間内に来院した患者さんの診察・会計が終わるまで対応しなければなりません。
そのため、看護師一人で医師の診療補助を行わなければならず残業することも多いです。
病棟のように、シフトがないので申し送って引き継ぐことはできない点はデメリットでしょう。
後片付けや書類整理などの業務を終わらせて戸締りをしなくてはいけないので、帰宅時間が予定よりも遅くなることもあります。
クリニック看護師に向いているタイプは?
クリニック勤務が向いているケースは主に2つあります。
プライベートを充実したい人
クリニックは地域に数多く存在しており、求人数も豊富です。そのため、家事や子育て・趣味などのプライベートを優先したい人にはぴったりの職場でしょう。
近所で就職できれば、徒歩圏内で通勤できるので、仕事が終わった後の自由な時間を多くとれます。
また、クリニックによってはカレンダー通りの休みも取りやすいので家族との予定が立てやすくなりますよ。
規則正しい生活を大事にしたい人
クリニックは、夜勤が無い分、身体的な負担が少ないです。
病棟勤務で不規則なシフトが苦痛になり転職を検討している場合は、クリニック勤務が向いているかもしれません。
長く勤務するには自分の健康管理が大事です。
無理せず働ける環境を優先したい場合は、残業が少なく年間休日数の多いクリニックを選ぶとよいでしょう。
新人看護師がクリニックへ転職する際のポイント
新人看護師がクリニックへの転職をした場合、どのようなことが起こりうるのでしょうか。
クリニックの転職は、病棟でしっかり経験を積んでからの方がよいと言われますよね。
しかし、経験が浅いまま転職した新人看護師ならではの強みがあります。
注意点も理解した上で、新しい職場を探しましょう。
新人看護師がクリニックに転職する場合の強み
クリニックに転職した際の新人看護師の強みは以下の3つです。
看護師特有の変なクセがないので知識の吸収がはやい
長く同じ職場で勤務していると、その職場ならではのルールに固執して、転職先で新しいやり方がなかなか覚えられない場合があります。
しかし経験が浅い新人看護師は、こだわりや比較対象となる事例が少ないので、さまざまな新しい知識を吸収しやすいですよ。
クリニックの診療領域が狭いほど、新たな専門知識を高めることができるのも魅力でしょう。
年齢が若いので新たな職場環境に適応しやすく成長もみこめる
年齢が若いうちに転職すると、順応性が高いので職場環境にすぐに慣れることができます。
病棟経験が長いと、患者さんとのかかわり方の違いや業務範囲の多さなどギャップを感じやすく、中にはクリニック勤務に抵抗を覚える人も少なくありません。
覚えることはたくさんありますが、意欲があれば成長も見込めます。
クリニック内での勉強会や資格取得支援を行っている場合もあるので、できることがどんどん増えるでしょう。
元気・体力がある
経験が浅いうちに転職した場合は、知識や技術が不足している分を体力でカバーすることができます。
クリニックによっては、パート勤務をしている40代以降のスタッフが多いこともあるため、フルタイムで元気に働ける若いスタッフは重宝されますよ。
また残業に対応できることや、忙しく目まぐるしい業務に耐えられることも、転職する際のアピールポイントになります。
新人看護師がクリニックに転職する場合の弱み
クリニックに転職した際の新人看護師の弱みは以下の4つです。
看護師としての知識や経験が足りない
病棟での経験が浅いまま転職する場合は、基本的な看護師のスキルが十分に身についていないこともあります。
とくに採血や点滴などは、クリニックの採用において必須条件に挙げられることが多いです。
1日に多くの患者さんの対応をしなければならないので、何度も失敗はできません。
また、緊急時の対応を経験しておらず、イレギュラーな事態に臨機応変に動けないことも考えられます。
クリニックを探す際には、教育体制や仕事内容を慎重に選ぶ必要があるでしょう。
早期転職が「医療現場に適応できなかった」というネガティブな印象を待たれる可能性
新人看護師で転職をすると、クリニックからは退職理由について深く聞かれることが予想されます。
マイナス面だけの理由だと、楽をしたいからクリニックを選んだのかなと思われるリスクもあります。
今後、クリニックでどのようなことを学びたいのか、自分の強みは何かをしっかり自己分析する必要があるでしょう。
新人看護師のクリニック転職におすすめの診療科
クリニックといっても診療科や勤務形態、規模の大きさなどで比較するとさまざまな種類があります。
ここでは新人看護師におすすめのクリニックを4種類ご紹介します。
経験のある診療科クリニック
クリニックに転職する際には、すでに勉強している診療科であれば採用されやすいです。
全くの未経験でないことから、業務内容もイメージしやすくミスマッチが少ないのもメリットです。
クリニックのスタッフにも、どこまで経験していて知識を持っているのか説明ができるので、早いうちに業務を覚えることができます。
眼科クリニック
眼科クリニックは、手術の介助や診察の補助など比較的同じ業務をこなすことが多いので、経験が浅い新人看護師でも働きやすいです。
命に直結する疾患を持っている患者さんが少ないため、急変対応も頻繁には起こりません。
一方、注意点としては多くの患者さんの対応を求められるので、テキパキと動ける人が向いているでしょう。
健診系クリニック
健診系のクリニックでは、検査項目によってスタッフが配置されるため、新人看護師でも受け入れ可能な求人が豊富です。
採血が苦手な場合でも、同じ業務を繰り返し行うことで慣れていくでしょう。
また、健診が初めての看護師が多く転職してくるので研修制度も整っていることも魅力です。
さまざまな年代の利用者とかかわるので技術面よりもコミュニケーション能力に長けている人が活躍できますよ。
美容クリニック
美容クリニックの看護師は、サービス業として企業のイメージ作りに貢献しています。
そのため年齢制限を設けていることがあり、若い看護師が多いです。
一般的な医療知識のほかに、美容皮膚科や最新機器の取り扱いなど専門的な知識を覚える必要があるので、研修が充実していますよ。
クリニックの中では高給与が期待できるので人気ですが、残業が多かったり土日が忙しかったりといったデメリットもあります。
新人看護師がクリニック転職を成功させるためのポイント
いろいろ知った上で、クリニックに転職したいと思っている場合、次こそは長く働ける職場を探したいですよね。
納得のいく転職をするためには、いくつかの準備が必要です。
自分の経験してきた診療科のクリニックを選ぶ
まずは、病棟経験のある診療科のクリニックを検討しましょう。
基本的な疾患の知識を学んで、実際に患者さんと接した経験はクリニックでも大いに役立ちます。
未経験の科であると、技術や知識も一から覚える必要があり、教育体制がない場合は苦労することもあります。
特に、内視鏡や透析クリニックなど、専門的な機械の操作や技術を要する職場では、病棟以上に慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
病棟経験を振り返り転職理由をしっかり認識する
転職を成功させるためには、何が理由で退職に至ったのか・今後どうしたら働けるのか、自分の考えを明確にしなければなりません。
もし人間関係が理由の場合は、どこの職場でも同じような悩みが起こる可能性が高いです。



クリニックはスタッフの人数が少ないから、苦手な人を避けて働くことは、なおさらできなさそう…。
収入面と休みの少なさに不満がありクリニックへの転職を検討している場合は、残業時間や年間休日だけでなく、福利厚生・手当についても事前に調べましょう。
不規則なシフトが合わず転職したい場合は、無床の日勤クリニックの中から探しましょう。
曜日によっては半日で終わるところもあるので健康的に働けますよ。
多くの転職情報を得て、たくさんの求人から選択する
クリニックは求人数が多い分、職場の雰囲気や待遇面などさまざまです。
1か所に絞らず、同時進行で複数のクリニックの情報を得ることで、比較検討しやすくなりますよ。
給料だけで判断すると、実際には救急外来も受け入れていて忙しかったり、外来手術が長引いて残業時間が多かったりと、大事な情報を知らずに入職してしまうことになりかねません。
クリニック勤務では、病院のように新人教育体制は整っていない場合が多いので、さまざまな求人を見ることで転職が成功しやすくなるでしょう。
入職前にクリニックの詳細を把握しておく
転職する際には、待遇面だけでなく内部情報についても把握する必要があります。
クリニック内の雰囲気や詳しい業務内容など、働きやすさに直結する情報をたくさん収集することで、選択肢の幅が広がりますよ。
働くスタッフの人数が少ないと、働いてからすぐに即戦力を求められる場合も少なくありません。
入職前には、職場見学やお試し勤務が可能な場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。
実際に働くスタッフとかかわることで、自分に合いそうな職場なのか判断しやすくなりますよ。
まとめ
本記事では、新人看護師がクリニックに転職する際に、把握しておきたい知識や転職する上で気をつけたいポイントについてお話しました。
クリニックは、日勤で働けて休日も多いので働きやすい職場として人気です。
一方、病棟と異なり夜勤手当のない分、給料が下がる可能性もあります。
もし今の職場が合わずに悩んでいる場合は、クリニックに転職することで働きやすくなるかもしれません。
できることが増えると看護師としての自信がつき、仕事も楽しくなりますよ。
デメリットもきちんと把握した上で、上手に転職活動を進めていきましょう。


