新人看護師として働きはじめると、覚悟していても、さまざまな大変なことがありますよね。
「仕事に行きたくない」
「看護師に向いていないのかも…」
このように思い悩んで、1年目でも今の職場を辞めたいと思うケースは少なくありません。
2019 年度の正規雇用看護職員の離職率は 11.5%、新卒採用者の離職率は 8.6%、既卒採用者の離職率は 16.4%であった。
新人看護師が転職を考えるほどのつらい経験はどのようなものが挙げられるのでしょうか。
この記事では、新人看護師が今の職場を辞めたいと思う理由と、転職せずに悩みを解決する方法をご紹介します。
今の職場での働き方に悩んでいる人は、ぜひ最後まで読んで解決の糸口を見つけてくださいね。
新人看護師が転職を考える理由と解決方法
新人看護師が転職したいと思う理由はさまざまですが、大きく分けて6点あります。
看護実習で臨床現場の雰囲気をなんとなく知っていても、実際に看護師として働きだすと仕事を辞めたくなるほど深刻な悩みを抱える人は多いでしょう。
これまで同じように悩んできた新人看護師は、どのように解決しているのでしょうか。
それぞれ詳しく解説いたします。
責任の重さ
新人看護師が転職を考える理由の一つは、責任の重さです。
初めて行う看護技術や、覚えなくてはならない医療機器の取り扱いに戸惑うことも多いでしょう。
始めの数回は先輩に教わりながら実施できても、次からいきなり一人で行わなければならない場合はプレッシャーや恐怖を感じます。
実際に関わる患者さんに対する看護業務は、新人であることを言い訳に失敗するわけにはいきません。
優しい言葉をかけてくれることもあれば、時に患者さんからの何気ない一言に傷つく場合もありますよね。
配属部署によっては、昨日まで元気だった患者さんが急変して亡くなるケースもあり、体力面よりも精神的にきついと感じることもあるでしょう。
まだ経験が浅く自分の看護に自信がないときは、ヒヤリハット・インシデントも起こしやすいです。
医療ミスに対する恐怖から、仕事がつらくなり、不眠や食欲不振などの体の症状が出る場合もあります。
解決方法
このような看護業務の責任の重さで悩んでいるときには、遠慮せずに周囲の人に相談しましょう。
新人看護師は、何でも質問できるという特権があります。
しかし、経験年数を重ねるほど、基本的なことほど聞きづらくなるもの。
「今質問したら嫌がられるかな」「できない看護師だと思われるかな」などと、迷っている時間はもったいないです。
まな勉強熱心だと評価されて、周囲の先輩看護師や医師も色々と教えてくれるようになるよ。
技術に不安が残ったまま患者さんに処置やケアをして、何かあってからでは遅いですよね。
責任の大きい仕事だからこそ、しつこいくらいに聞いて納得して業務に進みましょう。
また、急変対応は関わる機会が少ないからこそ、実際を見て学ぶことが大切です。
看護記録をみたり、事例検討会で対処法を知ることでだんだんと知識が身に付き、プレッシャーの中でも動けるようになるでしょう。
しかし、精神的に追い詰められた状態が続くのは身体によくありません。
もし、出勤できないほど体調に支障が出ている場合は、病院受診することも検討してください。
職場の人間関係
新人看護師の働きやすさは、職場の人間関係の良し悪しが大きく影響しており、悩んでいる人も多いです。
人間関係は実際に働いてみないと分からないため、部署ごとに当たり外れが激しいのも特徴でしょう。
プリセプターに毎日怒られてばかりで、つらい思いをしている人も多いのではないでしょうか。
うまくいったとしても評価してもらえず、キツい言葉ばかり投げかけてくる先輩看護師は、苦手になってしまいますよね。
先輩看護師も新人の頃は同じように悩んだはずなのに、なぜか理不尽な態度を取ってくることも少なくありません。
また、キャパシティーを超えた業務を任されたり、逆に何もさせてもらえなかったりと、嫌がらせを受けることもあるでしょう。
そもそも部署全体の雰囲気が悪く、陰口や派閥があるような状況では仕事がやりにくいですよね。
解決方法
職場全体の人間関係を改善することはむずかしいですが、自分の態度を見直すことはできます。
特定の看護師に苦手意識を持っている場合は、指導されている間も相手の顔も見れなくなったり、きちんと挨拶ができなかったりしていませんか。
相手にそのような態度や感情が伝わると、余計に関係が悪くなることも考えられます。
基本的なことではありますが、朝の挨拶や指導についてくれた際のお礼などは、苦手な人ほど丁寧に行いましょう。



素直に聞く姿勢を見せることで、先輩看護師との関係も少しずつよくなるかも。
自分の理解が十分でない場面では、自分から積極的に質問したり、先輩の看護技術を見学させてもらうこともおすすめです。
「わからないことある?」と親身に聞いてくれるのは、ほんのわずかな先輩だけではないでしょうか。
苦手な先輩看護師も、もしかしたら慣れない新人指導と普段の業務で気持ちの余裕がないだけなのかもしれません。
質問するタイミングを伺って、わからないことは聞きましょう。
また、指導方法について何か要望がある場合は、プリセプターや教育担当との面談の際に希望を伝えることで改善が見込めます。
もし指導を超えた嫌がらせやパワハラがあった場合は、上司に申し出ましょう。
上司から相手に指導がいき、それでも解決しない場合は異動になることも考えられます。


残業が多い
新人看護師が転職を考える理由には、残業が多いことも挙げられます。
まだ業務に慣れていない間は、一つ一つのケアや技術に時間がかかってしまいますよね。
忙しい病棟だと先輩のフォローも少なく、放置されることもあるでしょう。
早く業務を終わらせたくても、緊急入院などで病棟がバタバタ忙しくなると、話しかけづらい雰囲気があり、先輩を頼ることも難しくなってしまいます。
また情報収集のために、業務開始の1時間以上前に出勤するケースも少なくありません。
新人看護師は「勉強の一環だから」と、夜勤担当に申し送りが終わってもスムーズに帰れないこともあるでしょう。



「仕事が終わらなーい」「早く帰りたーい」
このような悩みに直面すると、だんだんと心の余裕がなくなってきますよね。
本来なら患者さんとしっかりと向き合いたいのに理想的な看護ができず、ストレスとジレンマを抱えてしまいます。
解決方法
残業時間を少しでも減らすためには、業務前に念入りにシミュレーションを行うことが大事です。
まずはロールモデルとなる先輩看護師や、他の新人看護師のやり方を真似してみましょう。
決まった時間に行う検査やケアは忘れずに記録して、業務に優先順位をつけてください。
緊急で入る可能性のある手術や入院などは、別のメモに準備物品や業務の流れをメモしておくことで徐々に対応できるようになりますよ。
それでも残業が多く、周囲のフォローが十分でない場合は、主任やリーダー看護師に相談することも検討しましょう。
上司は、部署内の看護業務が円滑に進むように采配する責任があります。
新人看護師であっても遠慮する必要はありません。
安全に看護業務を行うためにも、業務内容と日々の残業時間を報告して、仕事内容を見直してもらいましょう。
夜勤がつらい
新人看護師が転職を考える理由の一つは、夜勤がつらいことです。
2交代勤務は想像以上にハードで、体力も気力も最初は持続しないですよね。
限られた人数で病棟全体を回らなくてはいけないので、夜中のトイレ介助や体位交換だけでも体力を奪われます。
さらに急変対応や緊急手術の準備・受け入れなどが入ると、十分に仮眠がとれないこともあるでしょう。
クタクタになりながら、朝の採血や看護記録などが終わらずに申し送りの時間を過ぎても帰宅できないことも多いです。
夜勤のメンバーも重要です。



苦手な先輩看護師と一緒だと、気を遣って余計に疲れちゃう。
大変な夜勤を一度経験すると、夜勤前から憂鬱な気持ちになり気持ちの切り替えができない人も多いです。
不規則なシフトで体調も崩しやすくなり、せっかくの休日も体力を回復させることが優先になって、思うようにリフレッシュできないことも転職したいと思う要因でしょう。
解決方法
きつい夜勤を乗り越えるためには、心身ともに十分な休養をとる必要があります。
睡眠不足では、長時間勤務で集中力が持たず、ミスも誘発されやすくなってしまいます。
夜勤前は、ゆっくり入浴したり音楽を聴いたりと、リラックスして休息をとりましょう。
日勤業務よりもプレッシャーのかかる夜勤では、常に気が張り詰めていて疲れてしまいますよね。
もし困ったことがあったら、自分ひとりで解決しようとせずに応援を呼ぶことが大事です。
また、仮眠で眠れないという人は、ホットアイマスクや耳栓なども効果的です。
目を閉じて深呼吸するだけでも、疲労感は軽減されますよ。
忙しい夜勤業務を効率的にこなすためには、業務を前倒しで行動することも大切です。
緊急対応に備えて、余裕のある時間帯に途中まで看護記録を終わらせたり、朝の準備を行ったりすることで余裕を持てるようになりますよ。


給料が安い
新人看護師は、業務内容と給料が見合わずに転職を検討する人も多いのではないでしょうか。
ハードな仕事に加えて、毎日の残業が当たり前になっていると満足に休むこともできません。
1年目は、終業時間ぴったりで帰宅できるケースは少なく、指導や記録に追われて残業することが多いですよね。
新人看護師の場合、サービス残業として扱われることもあるでしょう。
また残業をしていても申請しにくい雰囲気があると遠慮してしまいますよね。
看護師が一般的に高給与だと思われるのは、夜勤手当が大部分を占めているからかもしれません。
新人看護師の場合、夜勤回数も少なく、責任のある業務と低い給料にギャップを抱きやすいです。
看護師は、他の医療従事者と比較して患者さんに接する時間が長く、全ての業務に危険を伴い、感染や被ばくなどのリスクも高いです。
「常に動き回っているのに、これだけしかもらえないの?」とモチベーションが下がってしまう人も多いでしょう。
また、先輩看護師の給料を知って昇給が期待できないことが分かると、今後のキャリアプランを考え直す人も少なくありません。
先輩看護師に遠慮して休みの希望も入れることができないと、リフレッシュしにくいですよね。
サービス残業が当たり前になっている労働環境は、病院自体の問題かもしれません。
解決方法
サービス残業については、新人看護師に限らず不満を抱いている人は多いので、まずは師長に相談することを検討しましょう。
改善が難しいようであれば、労働基準監督署に相談することも手段の一つです。
本来なら労働時間と見なされる情報収集の時間や研修については、給与未払いとして判断されるかもしれません。
また、勤務開始前の情報収集については、上司にあらかじめ前残業のルールを設定してもらうことで残業時間を短縮できます。
業務に慣れない間は、メリハリをつけて働くことや息抜きもうまくできないので、給与に不満を持ちやすいです。
夜勤回数が増えて仕事に慣れてくると、収入と仕事内容のギャップは少し解消されるかもしれません。
時間外の研修が多い
医療現場では、常に新しい知識や技術を習得しなければならず、研修や勉強会が多いです。
多忙な勤務の合間に研修の予定も入るので、休む暇がなく転職を検討する人は少なくありません。
研修は、昼休みの時間や日勤後など時間外に開催されることが大半です。
職員全員参加の研修の場合は、夜勤明けや休みの日に出勤しないといけないケースもあるでしょう。
そのほかにも、定期的な新人研修や課題もあるので、通常業務に加えて負担が大きいですよね。



毎日の復習や課題など、帰宅しても勉強しなければならない状況だと、常に仕事モードで気持ちが休まりません。
配属先の担当領域が多いと、さらに勉強時間が増えるので、慣れるまでに時間がかかりますよね。
解決方法
毎日の勉強は、できるだけ家に持ち越さないように工夫しましょう。
すきま時間を使って調べたり、同僚や先輩看護師に積極的に質問したりすることで解決できるかもしれません。
オンオフを切り替えて上手に休むことも、ときには必要です。
時間外研修は委員会担当の看護師に相談し、休みの日はオンライン視聴形式で参加するなど代理案を検討してもらいましょう。


まとめ
今回は、新人看護師の転職理由から判明したリアルな悩みとその解決方法についてお伝えしましたが、病院全体としての問題があるとすぐには改善が難しいのも実情です。
その場合は、思い切って転職も検討しましょう。
仕事を辞めたい一心で、最初から転職活動することは望ましくありません。
しかし、自分なりに解決に向かって努力したあとに転職を決めた場合は、退職理由や今後の希望が明確になりやすいです。
そのため、採用面接でもしっかりと回答できるので、転職活動もスムーズに進むでしょう。
人手不足の看護師業界は、第二新卒でも就職できる医療機関が多く存在しています。
実務経験が浅くても一から指導してくれる教育体制の整った病院や、日勤のみのクリニックなど、自分の希望に合った就職先が見つかるでしょう。
看護師も多様な働き方が可能になっており、病院以外にも活躍できる場は広がっていますよ。
今の悩みが少しでも解消されて、働きやすくなることを願っています。
