新人看護師は、業務を覚えたり、勉強しないといけないことが沢山あって大変ですよね。
それに加えて、職場の人間関係に悩んでいたり、病棟の雰囲気に慣れなかったりすると、仕事に行くのも嫌になってしまうのではないでしょうか。

「苦手な先輩と顔を合わせるのが辛いよぅ」
「病棟のどこにも居場所がない…」
その解決法のひとつとして、部署の異動を考える人も少なくないでしょう。
しかし、新人看護師が部署の異動を希望しても、すんなりと受け入れられるわけではありません。
この記事では、1年目の看護師が実際に異動しようとした場合、どのようなことがあるのか、メリット・デメリットなどについても詳しくご紹介します。
今後、自分らしく看護師として働くために、事実をきちんと認識して行動に移しましょう。
こんな理由で異動はできるの?
1年目の看護師が、異動を申し出たいと考える理由は、主に4つのケースが挙げられます。
それぞれのケースの詳細と、実際に異動できる可能性があるのかについてご紹介します。
入職時、希望通りの部署に配属されなかった場合
入職時に配属先の希望を提出していても、望み通りの部署にならなかったという新人看護師は多いかもしれません。
第三希望さえ通らず、全く想像していなかった部署に配属になった人もいるでしょう。
しかし現実の人員配置は、新人看護師の配属希望より看護部全体の人員配置状況が優先されます。



この時期は退職する人や、先輩ナースたちの異動もあるもんね
配属先に納得がいかない場合、看護部で異動希望の意向調査を行う時期に、希望の部署への異動を申し出ることは可能です。
看護部の意向調査でなくても、病棟師長との個人面談の際に、今後のキャリアプランや希望部署について相談できます。
業務内容が自分に合わなかった場合
実際に働いてみると、想像していた以上に業務がハードで、これまで描いていた看護師のイメージとのギャップが激しく、モチベーションが下がることがあります。
看護師の仕事は配属先によって大きく異なり、覚えることや身につける看護技術もさまざまです。
人によって向き不向きのある業務もあるでしょう。
しかし新人ナースが1年目で学んでいることは、その分野の看護師としての基礎中の基礎。



新人時代はどこの部署でも「院内新人教育プログラム」を用いて育成することが基本です。
手術室や救命センターなど特殊な部署に配属され、どうしても業務内容が合わないと感じたら、一般病棟に部署異動を申し出るのはアリかもしれません。
配属先になじめなかった場合
配属された病棟の雰囲気になじめず、異動したいと考える人もいるでしょう。
忙しい病棟に配属された場合、目まぐるしく変わる業務に圧倒されて、自分の居場所がないと感じることがあります。
また、分からないことがあっても、殺伐とした雰囲気だと先輩に話しかけにくいですよね。



ほかのスタッフはワイワイと楽しそうだけど、会話に入っていけない…。
まずは自分から積極的にコミュニケーションをとることが必要ですが、自分自身の努力でどうしようもない問題があるのなら、異動希望を含めた内容で病棟師長に相談してみましょう。
自分にとって居心地のよい雰囲気の病棟に異動できれば、本来の自分の力を発揮して働けます。
苦手な先輩看護師がいる場合
配属先の先輩看護師の中には、「合わない」「苦手」だと感じる人はいるかもしれません。
しかし看護業務はチームで行うため、苦手な先輩看護師との関わりを避けるのは基本的に難しいですよね。
とくに、相手が新人指導担当だった場合は、理不尽な指導や嫌な対応をされることで、ますます異動したいと感じてしまいます。
もし、指導を超えた厳しい言葉を浴びせられたり、仕事に支障をきたすような嫌がらせ行為などがあったりした場合は、主任や看護師長に相談して異動を検討しましょう。
異動しないで仕事を続けるとどうなる?
さまざまな理由で異動したいと考えても、すぐには言い出しにくいですよね。
つらい気持ちのまま仕事を続けた場合、どのようなことが考えられるのでしょうか。
少し無理をしてでも毎日頑張って出勤することは少なからず必要です。
しかし、あまりに合わない部署だと、業務をなかなか覚えられずミスも多くなります。
先輩看護師のフォローが手厚い新人の時期でも、些細なミスが積み重なることで重大な医療事故を招く可能性もあるのです。
また、我慢し続けているとストレスから、不眠や吐き気などさまざまな不調が出ることがあるでしょう。
体調管理は、不規則な看護業務を続けていく上で大切なことです。
症状がある場合には、心身ともに十分に休息をとって自分に適した職場で働くことをおすすめします。
異動希望をだすとおこられる?
思い切って部署異動を申し出た場合、周囲にどのような反応をされるのでしょうか。
新人看護師が、突然異動希望を出した際には、まず上司に理由を聞かれるでしょう。
仕事内容が合わないことや人間関係の悩みなどの理由を伝えても、「まだ慣れていないから、もう少し頑張って」と説得される可能性が高いです。
また、上司の立場からみると、部署内の新人看護師をスタッフ一同で指導して、1人前にする責任があります。
まだ十分なスキルが身についていないまま、他の部署に異動させようとはなかなか思えないのが現実です。
さらに、他の先輩看護師に異動願いを出したと伝わった場合、「これだけ指導していたのになんで?」と思われてしまい、気まずい雰囲気になる恐れもあります。
異動によるメリット
新人看護師の異動希望が通った場合には下記のようなメリットがあります。
一からやり直せる
部署を変えることで、心機一転し改めてやり直せるので、人間関係も再構築できます。
これまで苦手な先輩看護師との関係で悩んでいた場合は、すっきりとした気持ちで働けるでしょう。
まだ1年目の間なら新人看護師として、先輩からしっかりと指導してもらえる体制が整っています。
分からないことはすぐに調べて、周囲の先輩看護師や医師に積極的に確認していくことで、やる気のある姿勢を見せることができますよ。
スタッフとのコミュニケーションが深まることで、徐々に新しい職場環境にも慣れていくでしょう。
新たな知識や技術を学ぶことができる
異動した部署では、これまでとは違った患者さんを受け持つことになるため、新しく疾患の知識や看護技術などを習得することができます。
これまで学んできた手技や日常生活の援助についても、その部署ごとで順番や方法が違う場合もあるので、先輩に確認しながら実践していきましょう。
新しい分野の知識や技術を学んだり、さまざまな看護師から指導してもらったりすることで、視野が広がり自分の成長を感じることができます。
自分に適した部署で働ける
「向いていないかも」と感じる部署で働いていると、看護師としての自信を失ってしまう人も少なくありません。
部署によって、患者さんの特徴や関わり方も異なりますし、スタッフの雰囲気も全然違いますよね。
自分に適した部署で働けると、無理をせず勤務できるので、これまで体調を崩していた場合も回復に近付くでしょう。
また、落ち着いた気持ちで仕事に取り組めるので、着実に業務を覚えることができます。
看護師としての自信を取り戻していきいきと働けますね。
異動によるデメリット
一方、部署を異動した場合には、下記のようなデメリットがあることを考慮しなければなりません。
ほかの新人看護師より遅れる
部署異動をすると、もともと働いていた新人看護師と比較してしまうことが多くなるでしょう。
ずっと同じ部署で働いていた同期は、夜勤デビューや受け持ち担当の独り立ちなど、着実にステップアップしています。
同じ1年目でも、現状に差があることに焦りを感じてしまうかもしれません。
同時に、他の先輩看護師からは「新人看護師」というくくりで同期と比較されがちです。
同期の進み具合は気にせずに、自分の目標に焦点を当てていく冷静さが必要になるでしょう。
悪いうわさが流れる可能性がある
1年目に部署異動を申し出たことで、周囲からは少なからず好奇の目にさらされます。
新しい部署では、なんで異動したのか興味本位で聞いてくる人もいるでしょう。



前の部署を悪く言っちゃうと、自分自身の評価を下げることになるから気を付けて。
また、前の部署にいた看護師も、働いていた時の様子や発言などを過剰に伝えたりと悪いうわさを流される場合も考えられます。
周囲からの印象を変えるためは、毅然とした態度で受け流し、新しい部署で一から頑張ることが最善の方法でしょう。
異動先でも自分が希望する働き方ができるとは限らない
念願かなって異動できた場合でも、仕事の悩みは新たに出てきます。
もしかしたら同じように苦手な先輩看護師がいるかもしれません。
また、異動部署の独自のルールによって、これまでできていたことも覚え直すことが必要になり、窮屈に感じることもあるでしょう。
ひと通りの業務ができるようになるまでには、何か月もの時間を要します。
心に余裕が生まれて、さまざまなことに一人で対応できるまでには数年かかることも多いです。
どこの部署においても、業務や人間関係の大変さがあることを認識しておくことで、理想と現実のギャップを感じにくくなるでしょう。
新人看護師の異動は非現実的
結論として、新人看護師がスムーズに部署異動をすることは非常に難しいです。
「どうしても新しい部署で頑張りたい」と前向きに伝えても、今の環境から逃げているのではと思われて説得力に欠けてしまいます。
実際、新人看護師が異動願いを申し出る場合、ネガティブな理由が多いのではないでしょうか。
新人の頃は、誰もが同じように悩んだ経験があるからこそ、上司は今置かれた場所でなんとか頑張ってほしいと思うでしょう。
そもそも部署異動は、看護師の配置人数をバランスよく調整する目的で行われるのがメインです。
また、ある程度の経験を積んだ看護師のスキルアップしたいという要望を叶える場合や、育休産休など家庭環境などの事情が優先的になるでしょう。
そのため、まだ経験の浅い新人看護師の異動は後回しにされる可能性が高いです。
異動希望がかなわない場合は?
実際に部署異動が難しい場合は、以下の方法を検討してみてください。
異動したい根本的な問題の解決を図る
今の部署でつらいことをもう一度整理してみましょう。
もしかしたら解決のための糸口が見つかるかもしれません。
例えば人間関係で悩んでいる場合は、上司に相談することが効果的です。
具体的にどのようなことに困っているのか、客観的な視点で詳細に記録に残しましょう。
もしパワハラなど見過ごせない事態の場合には、適切な対応をしてくれるはずです。
一緒の業務にならないよう配慮したり、相手に注意喚起をしたりと動いてくれるでしょう。
場合によれば相手が異動になるケースもあります。
今の部署で慣れるまで我慢して頑張る
今の部署でもう少し頑張ってみると、気持ちが変わることもあります。
まだ社会人としても慣れないうちは、仕事に行くだけでも疲弊してしまうでしょう。
しかし、だんだんと周囲のスタッフとコミュニケーションをとるうちに、話を聞いてくれる仲間もできます。
一人でつらい思いを我慢するのでなく、先輩の新人の頃の話を聞いて、モチベーションを上げるのも方法の一つです。
もし業務が合わないと感じる場合は、プリセプターや教育責任者に相談し、苦手なことを正直に伝えましょう。
慣れるまでは繰り返し同じ業務につかせてもらうことや、新しい業務に入るペースをゆっくりにしてもらうなど、改善策を一緒に考えてくれますよ。
転職を考える
異動希望が通らず、今の職場で働く意欲が湧かない場合は思い切って転職することも検討しましょう。
特に、身体的・精神的な症状が出ている場合は、自分の体のことを第一優先にして考えてください。
看護師の仕事は、場所を変えるだけでも幅広い選択肢があります。
病院の規模によっても、業務内容だけでなく、スタッフの雰囲気や教育体制なども大きく異なります。
新しい職場になることで気持ちを新たに頑張ることができるでしょう。
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新人看護師の異動は簡単ではない
今回は、新人看護師が病棟異動を希望する場合の、主な理由や現実として起こりうることについてお話しました。
異動したいと思う理由はさまざまですが、どの部署においても同じような悩みが出てくるものです。
すぐに環境を変えようとするのではなく、今の部署でどうやったら仕事を続けられるのか考えてみることが大切です。
同じ病棟のスタッフに相談することで解決策が見つかるかもしれません。
また根気強く、頑張ってみることで、考え方も変わるでしょう。
もしどうしても我慢できずに追いつめられる状況が続くなら転職するのも一つの手段として有効です。
最善の行動をとり、自分に合った職場環境で楽しく働けるよう頑張りましょう。

